会社の名前や代表者の名前のほかに、担当した人たちの名前がオープンになるような社会的なシステムが必要である。 それにより、携わる「人」たちが、それぞれ「責任感」と「プライド」をもって作業し、「俺がつくった」と自信をもっていえるような環境づくりが必要なのだ。
すなわち、作業に携わる人たちの「やる気」を引き出すことこそ、施工不良を防止し、建物の品質を高くすることだと考えている。 この度の耐震偽装問題については、われわれ「ものづくり」に携わるものとして、また建築士として、決して踏み込んではならないタブーのエリアに、立ち入ってしまった結果である。
年に5000〜6000人しか合格者がいない一級建築士としての誇りも、建築基準法第1条の「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉増進に資する事を目的とする」精神をも、おざなりにしている。 一部のディベロッパーらの市場原理主義にかしずき、単なる価格競争のみの利益追求を強要され、構造計算を偽造し、建築物の安心・安全という基本を破壊してしまったといわざるを得ない。

建築士としての倫理的欠知をさらけだし、一握りの建築関係者の違法、不当行為のために、業界全体が社会的信用を失墜させてしまった。 多くの建設業者がこのような連中だと思われることは心外であり、「悪塊の至り」と思っているのは私だけではあるまい。
地域において建設業を営むということは、そうしたあらゆる不正や瑕疵を防止する仕組みを保持することで、それによって初めて、顧客からの信頼を高めることができる。 九州の地場ゼネコンが地域を無視して、東京支店なるものを設置することの当否は置くとしても、地域に根ざした工務店には、今回の偽装などの一連の事件は信じられないことである。
そこで、ここでは地道に地域での信用を築き上げている工務店の品質管理の一端を紹介させていただき、このような方法が施工品質管理の常識であり、消費者が望めばいつでもそれを開示することが可能な施工会社が、地域には多く存在していることを知っていただきたい。 一定の要件を満たした主任技術者、または管理技術者を配置しなければならない。
技術者とは、工事管理・監督はもとより「工程管理」「品質管理」「原価管理」などを司る役割である。 専門業者ごとにも、主任技術者を配置し、直接工事に携わる技術者、資格者が必要である。
着工か5完成引き渡しまでの過程として工事の着工から建物の完成引き渡しまでの過程として、施工者はどのような管理を行うのだろうか。 おおよそ以下のようなかたちで施工管理を計画し、管理を実施していく。
施工品質を決定するのは事前の準備であり、その代表が「施工品質計画」である。 この品質計画の立案が組織的に正しくルーテイン化されている施工会社は信ずさん頼できる。
もちろん、杜撰な品質計画は論外であることはいうまでもない。 また、施工管理者にも能力差が必然的に生じるが、その能力差はこの施工品質計画がきちんと立てられるかどうかで判断できる。
ちなみに、ここでいう品質管理とは、建築物の品質を保証し得る建築物をつくり出すために、組織的な管理体制により、設計図書に表現されている要求性能を確認することにある。 施工計画にのっとり、施工状況の管理を記録していくのが施工管理記録である。
購入を考えるマンションの現場記録として、この施工管理記録がきちんとしている施工業者は、「まとも」と考えることができる。 もちろん、杜撰な管理記録しか残さない業者も存在する。
施工現場においては、必ず仕様変更など工事変更が起こる。 また、駄目チェックによって施工ミスを修正することもある。
品質を管理する上で重要なことは、IS09000が求める是正と予防処置である。 つまり、問題が起きた箇所がなぜ起きたのかを検討し、それを是正する。

そして再発させないための予防処置としてどのようなことが必要なのかを仕組みとして保持することにある。 是正、予防処置とは、製品の適合性を実証するために、顧客要求事項に対して是正すべき不適合課題を予防し、継続的に改善すること、ということができる。
ディベロッパーが用地を取得して土地代が決まる。 その土地に建てる商品規格を決めると、売上げの総額がだいたいわかってくる。
土地を無理して高目で買っているときは、マンションの販売から利益をあげるために、建物のコストダウンを図るしかなくなる。 売上げの総額はこれくらいで、土地代にこれだけかかったのだから、利益をあげるために、工事費は坪5万円以内で建てろ、とディベロッパーの経営者が命令を出す。
それが常識的にはとても無理な金額であっても、現場は実現しなければならなくなる。 このようなディベロッパーの経営者によるコストダウンの要求とその実現が、今回の事件の底にあるもっとも大きな要因である。
現在のように都心や大都市圏のマンション用地が高くなっても、用地を買わなくては商品をつくれない。 ディベロッパーは土地代でコストダウンを図れないのだ。
これはすべてのディベロッパーに共通している課題だ。 ではなぜ、Hの物件に建築確認偽造問題が集中したのだろうか。
Hは床面積当たりの販売単価を低く抑えている。 「100平方メートル以上で低価格」がHの売りだ。
そのため、土地の高値を販売価格に転嫁しにくい。 それでHは、工事費のコストダウンを徹底せざるを得ないのだ。

同業他社で、もっとも高いブランド力をもっているのはM不動産のマンションである。 同じゾーンでM不動産のマンションが出ると、少し高目になる。
これはブランドについた値段、つまり安心価格である。 ディベロッパーは共通の問題をかかえるが、高く売れるブランドをもつなどして価格に転嫁できるところは、極端な無理をして建築しなくてもすむのである。
工事費のコストダウンの源をみていくと、ビジネスホテルの開業指導をしている総研が推奨するコンクリートの超短期化工法、システム型枠工事に行きつく。 この工法は、通常7ー9日かかる1フロア分のコンクリート工事を4〜6日に短縮するもの。
システム型枠は上から下まで同じ断面の形で、それを積み重ねていくやり方だ。 この工法で工程を組んで、通常なら1年半かかる叩階建てを半年で仕上げてしまう。
工期の短縮のコストダウン効果は大きい。 労働者の手間賃だけではない。
重機や足場のリース料、現場にかけている保険料などが、工期が3分の1に短縮されれば、それに応じて安くなる。 この工法がコストダウンの本命である。

この結果、建物に無理が生じる。 コンクリートは液体だから、団結するまで一定の養生期間をもたなければならない。
ところがこれを4日間でかさ上げするから、コンクリートの強度が出るまえに負担をかけていくことになる。 たちまち躯体の品質が悪くなってしまう。
建ってすぐにひび割れが起きてしまうマンションが出ているのも、そのためだ。 K電鉄は、Kプレッソインシリーズを、東銀座をはじめ大手町まで7棟開業した。
このうち5棟を、超短期化工法でK建設が施工した。 池袋、五反田、茅場町の3棟が耐震強度不足で休業した。
超短期化工法そのものに無理があったというべきだろう。 ビジネスホテルで総研が指導した超短期化工法は、どのようにしてマンションに普及していったのだろうか。

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